《MUMEI》 「はぁ…はぁ…」 選手たちはスコアボードを見る。 (1点差…だと…?) こんな状況は以前にも経験していた。 勝てるだろうと踏んだその状況から、 一瞬にして極致にまで追い詰められるこの状況。 本来の力を見せた真の強豪を前に、 今、 選手たちに為す術はなかった。 市民体準々決勝時に海南に負けた試合と、 この状況は実によく似ていた。 だが、 それは似て非なる物。 あの時と今では、 重ねてきた努力の重みが違う。 成長している選手たち。 打てる手は、 確実に存在していた。 しかし、 気付くことができない。 その役目を担うのは、 自分たちではなかったから。 「…タイムアウトお願いします。」 その役目は、 彼らと共に成長してきた、 若きコーチ。 クロの役目だった。 前へ |次へ |
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