《MUMEI》

あ、彼がお風呂から上がってきた。
早速、聞いてみるわ!

ちょっと、どういうこと?
どうして隠すの?
私の性格知ってるんでしょ?

はっきり言ってよ・・・・・『別れよう』って・・・・・
それともそのままずるずる、一緒にいるの? 私は嫌だから。
それならきっぱり、離婚を切り出されるほうがマシよ。

あなたは私のことをいつも元気だって言うけれど、
いつもうるさいって言うけれど、
いつも悩みなさそうっていうけれど、

いつだって、あなたに関しては自信なんてないんだから。
距離が縮まるほど、不安になるんだから。



・・・・・何笑ってるの?こっちは真剣なんだから。

・・・・・?

この花束は何よ?

・・・・・今日は何の日かって?
・・・・・???

誕生日おめでとう・・・・・そうか!今日私の誕生日だった!
私、貴方のことばっかりで、自分のことにかまけてられなかったわ。


で?この手紙はなに?

彼曰く、

『授業で、かの有名な恋愛叙情詩の講義をしていたんだ。講義の中で実際に詩を書かせてみたんだが、採点に時間がかかってね。家で残業しようと思ったんだよ。・・・・・まあ、生徒の詩を参考にしようって魂胆もあったな。お前に手紙を書いて花束の中に入れとこうとしたんだが、何を書くか困って結局書けなかった。やりなれないことは、するもんじゃないな。』

だって。

浮気ではないようだけど、本当かな?

すると彼は私を抱きしめてこう言った。
『恋愛にも気力体力がいるから、疲れるんだ。俺以上にエリルが想ってくれるから、こちらは楽ちんさ。結婚前みたいに、自分を偽らなくてもいいからな』

ちょっと、それって私への怠慢なんじゃないかしら?

すると彼の次の一言で、私は撃沈したの。
『今夜のために、仕事を必死で済ませたんだ。奥さんへの怠慢どころか、すばらしいプレゼントを朝まで堪能していただこう』

私って単純・・・・・でもいいわ。

しばらくして、私のお腹にもう一つのプレゼントが運ばれたのはまた別のお話。

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