《MUMEI》

 ここは、とある一軒家のリビングである。田島佑一は帰宅するなり、姉・律子の怒鳴り声を聞いた。
「なぜなの?!私では不満なのね?」
次に男の低い声が聞こえた。義兄の佐竹宣明だ。「違うんだ。・・・・・悪かった。でも、もう無理なんだ。疲れた。すまない。」
母のとりなす声が間に割って入るのが聞こえる。姉は取り乱していた。
 姉と義兄は職場結婚し、3年目である。姉は専業主婦。義兄は美容師。最近まで仲が良かったのにどうしたのだろう?佑一がそのままそこに立っていると、ふすまが開いて、姉が出てきた。佑一を一瞥するとそのまま去っていった。

ぼんやりしていると、次に宣明が出てくる。
「佑一君」

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