《MUMEI》

「サラ、そっちのチビ頼むわ。俺、この馬鹿連れて先に行くから」
「わかった!兄ちゃん、頼むな」
現状全てに現実味が無く
唯々ラティは運ばれていくアンディーノを眺め見るだけ
怖い、恐い、コワイ
不安感ばかりに苛まれ、蹲ってしまったラティの手をサラが唐突に引いてきた
「ウチらも行こか。ラティ」
そのまま歩き始めたサラ
だがラティは途中、その手を解いてしまう
「ラティ?」
「……あいつ、何で?俺なんか庇ったって何の得も無いのに。何で……!」
無傷である今の自分が、ひどく憎かった
誰かに守られていなければ唯生きる事さえもできない弱い生き物
そんな自身に堪らなく腹が立って
また、涙が滲む
「……それ、オッちゃんが聞いたら、悲しむよ。ラティ」
「……何、で?」
「オッちゃん、ラティの事本当大事にしてるから。子供に愛情注ぐのに、理由や損得なんて関係ないんよ」
与えるのは、与えられるのは唯、無償の愛情
見返りなど求めはいないだろう
だはそれに何かを返してやりたいとおもってしまう
「ほな、行こか」
改めて差し出されたサラの手
その手を握り返すと、ラティはそれ以上何を言う事もなく、帰路を急いだのだった……

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