《MUMEI》 姉が初めて義兄をつれてきた時、なんだかぼんやりした人だ、という印象を佑一は持った。有害でも無害でもない。しかし今思うと、義兄にはじめからどこか不思議な感情を抱いていた気がする。そう、『義理の兄』というものをこえた、何か特別な感情を。 その夜、義兄は泊まっていくことになった。若い男女が、同室になって夜することといえば一つ。 佑一の部屋は姉の隣。姉の艶のある、押し殺したようなかすかなあえぎ声が聞こえてくる。 『んう・・・っ・・・あ・・・・ああん・・・ダ、ダメっ・・・あン・・・あんっ!』 それに呼応する義兄の低い声が聞こえる。しかし、佑一は反射的に耳をふさいでいた。なぜふさいだのか、そのときはわからなかった。いや、わかりたくなかったのかもしれない。 この気持ちが、義兄への想いであることを。 前へ |
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