《MUMEI》

姉が初めて義兄をつれてきた時、なんだかぼんやりした人だ、という印象を佑一は持った。有害でも無害でもない。しかし今思うと、義兄にはじめからどこか不思議な感情を抱いていた気がする。そう、『義理の兄』というものをこえた、何か特別な感情を。

その夜、義兄は泊まっていくことになった。若い男女が、同室になって夜することといえば一つ。
佑一の部屋は姉の隣。姉の艶のある、押し殺したようなかすかなあえぎ声が聞こえてくる。
『んう・・・っ・・・あ・・・・ああん・・・ダ、ダメっ・・・あン・・・あんっ!』
それに呼応する義兄の低い声が聞こえる。しかし、佑一は反射的に耳をふさいでいた。なぜふさいだのか、そのときはわからなかった。いや、わかりたくなかったのかもしれない。

この気持ちが、義兄への想いであることを。

前へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫