《MUMEI》 赤高ベンチ 「よしッ!! 何とか離されずにいるなッ!!」 峰田のシュートに安堵する安本。 「…作戦無視しやがったな。」 とは対象的に、 不満げな表情のクロ。 「決めたからい〜じゃないですか。」 安本と同じ様子の佑香。 「結果的に!!でしょ。 目先の1点が欲しいわけじゃないんだよ。」 「決めて怒られるのか…」 「舐めやがって…」 ……………………………… 椎名は別に相手を舐めていたわけではなかった。 というよりも、 むしろ相手の実力を臆したからこそ峰田のシュートを選んだ。 後半の流れを考えれば、 1つのミスで逆転を許しかねないこの場面。 はっきり言って、 ここで逆転を許すようであれば赤高に勝機はなかった。 仮に、 秀皇に逆転を許してしまえば観客たちは逆転劇に沸き上がる。 ギャラリーまでもが離れていく。 さらに言えば、 この勢いのまま逆転を許しでもすれば、 そのままずるずるとやられるような流れが容易に想像できる。 それに特に理屈はなく、 そういった試合を幾度となく見ている。 という、 経験者ならではの考えが頭を過るのだ。 だが、 クロはそうは考えてはいなかった。 多少のリスクを負わなければ勝てない相手もいる。 それがリアル。 冒険なしに勝てる相手ではないことを悟っていたのだ。 ……………………………… (1点外せば乗らせる可能性がでかい。 割りに合わないリスクだわな。 だけどここが勝負所。 ここで決めれれば僕のシナリオは試合終了まで揺るがない。 逃げた選択がいつまでも良い結果に繋がると思うなよ… こっちは頭からシナリオに添って事を進めてんだ。 脱線して悪い方に転んじゃえばそれこそ本末転倒。 そこからじゃ巻き返しは不可能。 最悪の結末予想して独りよがりな策立ててんじゃね〜ぞ。) 前へ |次へ |
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