《MUMEI》

廉に聞いてみることにした。

「廉って彼女いるの?」
「何で?」
「何でってなんとなく?」
「まさか沙弥香って俺に惚れちゃった(笑)」
そう言って彼は肩に手を回してきた。
心臓がヤバいよ。
「んな訳ないでしょ(笑)」
嘘ついちゃった。
「彼女ならいるよ。」
「えっ・・・。」
「空だよ。」
「空?」
私は一生懸命「空」という名前の桜鈴女学校の子を頭の中で探していた。
そしたら
「青いこの空だよ。」
彼はケータイの待ち受けになっている空を見せつけた。
「空が彼女?」
「うん。バカにしたっていいよ。俺の彼女は空だけだから。」
「何それ(笑)」

廉の言った「空が彼女」の本当の意味を知るのはずっと先だった。
この時の私は何も知らなかった。

「あ、そうだ。沙弥香。」
「何?」
「さっきからずっと沙弥香のこと呼んでる人いるけど、いいの?」
扉の方を指差した。
「あっ・・・」

幼馴染の俊だった。

「ごめん・・。」
「沙弥、あいつ誰?」
「同じクラスの稲葉廉。」
「フーン・・」
「それより何で俊、ここに来たの?」
「何となく。暇だったし。」
私は席に戻った。

「彼氏?」
廉が言った。
「彼氏じゃないよ。幼馴染。」
「嘘だーー。」
「嘘じゃない。」
「だってあの人、沙弥香と話してる時すげー幸せそうだった。」
「そんなことない。」
廉が私を指さして笑う。
廉の笑顔が大好きだった。

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