《MUMEI》

     コート



ザワザワザワザワ…



「頼むぞ榊ぃッ!!」



ザワザワザワザワ…



「ナイッシューです榊さんッ!!」



ザワザワザワザワ…



試合が止まっている間、


選手たちは静まり、


観客席からの声が体育館中に響き渡っていた。



「はぁ…はぁ…」



シューターは榊。


通常、


この場面では榊と両サイドを残し他の選手たちはディフェンスに着くのがセオリーだが、


秀皇はそれを選びはしなかった。


フィールダー陣は赤高側のコートに残り、


シュートが外れた場合のルーズボールを拾う形をとった。



(ここは絶対欲しい…)



まさに捨て身。


カウンターを臆せずこの攻撃に賭けた。



「…」



(…良い度胸だ。)



村木の顔付きが変わる。



(だけどな…)



「ピッ!!」



審判の笛が鳴る。



ビシュッ…!!



榊にフェイクはない。


真っ向勝負。



バシッ…!!



(俺の後輩をはめてくれた代償は高いぞ。)

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