《MUMEI》
顔知らぬ友
19時を少し回った頃、私は近くのコンビニまで買い物に出掛けた。しかし、コンビニに入った途端、私は思わず声を漏らした。
「ありゃあ……」
弁当はもとより、おにぎり、惣菜、サンドイッチのコーナーは、全て売り切れていた。菓子パンの棚もガラガラで、残りわずかとなっていた。
カップ麺はまだ数があったので、三つほど購入。残ってた菓子パンも幾つか購入し、コンビニを後にした。

事務所でカップ麺を作り、それを詰め込むように食べてる最中に、携帯にメールが届いた。父からのものだった。
『そっちはどうですか?(原文ママ)』
…私がメールを送ったのは夕方。しかし…返信が来たのは午後8時を回った頃だった。
私も父のメールに返信…しかし、通じない…。私は暫く待つ事にした。
後日、父から聞いた話だが、父は私のメールが届いた直後に返信したと言う。

私は、携帯のデスクトップに張っていた、Twitterのアプリを起動…何とか繋がった。
(東北方面のフォロワーさんは無事だろうか…)
私をフォローしてくれている、数少ないフォロワーさん…その中に、被災地域の方が何人かいた。

横浜ベイスターズファンの大学生、T君…
金魚とラガービールをこよなく愛するOL、Sさん…
職場内の異動でへこんでいた、Cさん…
某ラーメン店の話題で盛り上った、Mの旦那…

…顔も知らず、直接会ったことは無い。だが、Twitter上で縁あって出会った、私の大事な友人たち…。
(みんな…無事でいてくれ!!)
何度も、何度も送信ボタンを押す。だが、私の思いを嘲笑うかのように、ツイートは悉く弾かれた。
(皆が大変な時に…声すらかけてやれないってのか…!)
そして…午後9時以降…i-modeは完全に…沈黙した。
「クソッ!!」
無念の思いで携帯を閉じると、私は再びテレビに目を遣った。
地震発生から6時間以上…次々に…悲惨な状況が報じられている。
(…無事でいてくれ…頼む…!)
そんな中私は…ただ…フォロワーさん達の無事を祈る事しか出来なかった…。

後日談になるが、震災から一ヶ月程経ったある日、元請け会社の高田さんと話をした時の事。
「あの時は携帯が全然通じなかったなぁ」
と私が言うと、高田さんは…
「あ、俺比較的通じましたよ」
「え?…どうやって?」
「山口さん、i-modeメールで送ろうとしたでしょ?」
「ああ…確かに」
「俺、SMS(電話番号メール)で送ったんですよ。」
「SMS…!その手があったか!!」
すっかり忘れていた、携帯の機能だった。
…二度と起こって欲しくないが、もしまたこのような状況が起こった時の参考になった。

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