《MUMEI》
出逢い
「大好きです」

微笑む君の頬に手を添えると、君はゆっくりと目を閉じた。

…口付けの合図。

世の中では口付けなんて、軽いモノでしかない。

でも、僕は…違う。

僕は、きっと一生、この子に口付ける事ができない。

目を閉じた君をぎゅう、と抱きしめると、嗚咽が聞こえた。

「ごめんなさい…」

謝る事しかできない僕を、どうか許して。
















君は、どこにでもいる普通の女の子で。

僕は、この子に一目惚れをした。


「…灰羽廻です、よろしくお願いします」

転校生だった僕は、周りから浮いていた。
だが、僕はどこででもある事だろうと、気にせずにいた。


「灰羽くん…あの…」

そして、浮いている期間が長引き、流石に生活に支障がでるかなと考えてるようになった頃だった。

君の存在を認識したのは。


「…何ですか?」

「い、いや!別に用があったわけじゃなくて、その…」

「えっと…あなたは?」

「あっ、ごめんなさい!自己紹介がまだでしたね!」

ぺこっと頭をさげて、恥ずかしそうにはにかんだ彼女が、とても可愛くて。

僕は、恋をした。

「秋山優です、改めてよろしくね!」

「…よろしくお願いします」




end



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