《MUMEI》

暫時後―――…


莉乃のZRXは、東京湾を見渡せる海浜公園に佇んでいた。



「フウゥー…。」


莉乃は火照った身体を海風にさらしながら、煙草を吹かしている。



バイクのエクゾースト音…オイルの香り…そして途方もないスピード…。

他人から見れば自らの命を弄ぶような愚かな行為に映るかもしれないが、今の莉乃にとっては、それが唯一の安らぎの刻だった。



海浜公園にある時計は、午前3時を回ろうとしている。


莉乃の怒りが熱い“走り”によって癒された後は――…

…東京湾の夜風が、女としての欲望を呼び醒ます――…。



莉乃は携帯電話を取り出すと、誰かにコールを入れた。



――…トゥルルルル…トゥルルルル…プッ…。


*「はい。かしわぎでーす…。」


「もしもし?ゆきりん?…アタシだけど…。」


*「あ…さっしー?…どしたの?」


「突然だけどさァ…オトコ釣りに行かね?」



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