《MUMEI》

………………………………



クロは理解していた。


沖のシュートの特色を。


様々なシューターの特徴を取り入れる沖にはまる型はなかった。


同じフォームから無数のコースに繰り出されるシュート。


上下左右。


変幻自在にフォームを変えずにそれは繰り出される。


これが、まず1つ。


次に、
そのフォームにも無数のパターンが存在しているという点。


同じフォームからどんなコースにも投げられる…


という沖だが、


フォーム自体も型は無数存在する。


それが、
キーパーを狂わせる武器。


そして、


これまでことごとく上野の裏をかく沖。


その時その時のシチュエーション毎にシューターの心理からコースを予測する上野に対し、


沖は常に勘だけで打つ。


つまり、


ここに読み合いは存在しない。


何も考えていない沖だからこそ、


深くを考える上野の裏をかくことができるのだ。


多くのシューターの型を予想する上野の技術は、


ただ1人。


沖にのみ通用はしない。


策士策に溺れる。


とはよく言った物で、


誰にでも通用すると考えられていた上野の手法は、


深読みというリスクの大きな失敗により打ち消される。


あえて、


上野のようにシューターを色で表すのであれば、


沖のそれは黒。


だが純粋な黒ではなく、


全ての絵の具を混ぜると黒になる。


というような、黒。


この型を予想することは不可能。


型のないこのスタイルを止める術は単純な思考が求められる。


来た球を止めるという、


実に単純な方法が。



………………………………

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫