《MUMEI》

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暫時後―――…


とあるテレビ局の控え室で一人、鏡に向かう人物があった。


―――…ゾリ……ゾリゾリ……


その人物は女の容姿をしながら、髭剃りで肌を撫でている。


「所詮アタシはニューハーフ…

…でも、そこらの安っぽいオンナには(美貌で)負けない自信があるヮ…。」


在日タイ人U世ハール・ナコジーマ・タマナッシ……またの名をアイドル・児嶋陽菜は、剃り残しがないか丹念に確かめながら、鏡の中の自分に語りかけていた。



「…だけど―――…」

――――…ゾリ!


陽菜はT字カミソリを肌に止めて、シェービングクリームだらけの顔で振り返る。


陽菜の視線の先には、A?Bの新曲「Everydayガーターベルト」の販促ポスターが貼られていた。


そのセンターポジションには、燦然としたオーラを纏う前田圧子の姿があった。


「無理ょね……。

悔しいけど……この娘だけは特別…。

…どんなに美貌を磨いても…

…この娘には絶対に勝てない…。」


ニューハーフの頬に、ひとすじの悔涙が流れた――…。


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