《MUMEI》
-Interval@-
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最近なんか、パッとしない。



もう何年も彼氏なんかいないし、友達も次々嫁にいっちゃって、誰も構ってくれないから、膨大な一人の時間をもて余している。

かといって、「仕事に生きよう!」とか思っても、あたしの仕事は美容室のレセプションで、いわゆるアルバイトだ。
今さら転職してキャリアウーマンを目指そうにも、このご時世、しがない短大卒の女子がまともな職に就けるワケもなく、あまりにもポテンシャルが低すぎる上、あたし自身そこまでの向上心も持ち合わせていない。

それでもあたしは恵まれている、と思う。家族の話である。

お父さんが大手製薬会社の役員でお母さんが地元の名家出身という、まるでドラマの設定のような家族構成。
バイトの給料はビックリする程安いけど、おかげで安心して脛をかじって生活できるのだ。家のことは家政婦さんが全部やってくれるので、家事は一切したことがない。
両親も一人娘のあたしに甘いので、休日に家でゴロゴロしてても文句一つ言わない。特に父は、「働かなくても嫁がなくても、このままずっとお父さんと暮らせばいいよ」なんて笑って、思いきり親バカ振りを披露している始末だ。


そんな恵まれた環境で生まれ育って、すっかり怠惰になってしまったあたしを、どうにかしなければ、と真剣に心配してくれていたのは祖母だけだった。


「あなた、今年で幾つになるの?」


リビングで寛いでいた時、祖母がいきなりそんなふうに問いかけてきた。

「27、だけど…」

怪訝に思いながらも、一応素直に答える。祖母はわかってますよと言わんばかりに深々と頷き、また口を開いた。

「わたしがあなたと同じ歳の頃は、もう娘が3人いたわ」

「へぇ」

「戦後間もなくてね、夫も戦争で亡くしてしまったし、幼い娘たちを守りながら生活するのは本当に大変だったのよ」

「そうなんだ」

「そのうち娘たちもみんな立派な方へ無事に嫁いでそれぞれ子供も産んで…片親でも人並みに娘たちを育て上げたことを誇りに思うわ」

「うん、すごいね」

「最近はお嫁にいかない女の人も増えているそうだけど、女としての幸せは結婚してこそ享受出来ると、わたしは思うの」

「ふーん」

適当に返事をしつつ、だから何?と思っていると、どこに隠していたのか祖母は傍らから写真を一枚取り出してあたしの方へ差し出した。あたしは何の気なしにそれを受け取って眺めてみる。



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