《MUMEI》 . おみあい。 オミアイ。 お見合い。 空っぽの頭の中でようやく漢字が当てはまる。 「な、なんでッ!?」 動揺で声がひっくり返る。祖母は表情を変えない。 「あなたにぴったりだと思って」 「何を根拠にそんなことッ!っていうかお見合いって…!」 あたしの知るかぎり『お見合い』っていうのは、結婚相手を求めて男女が第三者を仲介として会うことであって、つまりは結婚を前提として二人の将来の話をすすめていくワケで、そのお見合いをしろってあたしに言うってことはつまり、 悶々と考えて、はっ!とひらめいた。 「さては、この家からあたしを追い出す気ねッ!?」 祖母の魂胆を見抜いたと同時にその勝手さに腹が立って、あたしは勢いよくソファから立ち上がる。対して祖母は涼しい顔をして、そうよ、と答えた。平然と返されてあたしは面食い黙り込む。祖母は物憂げにため息をついた。 「ご近所の目もありますからね、わたしの孫娘がいき遅れなんて恥ずかしくて恥ずかしくて」 「あたしの歳で独身なんて珍しくないでしょ!」 「あら、わたしは19で嫁ぎましたよ」 「時代が違うだろッ!?」 自分の意見に反論されたのが悔しいのか、あたしの発言が気に食わなかったのか。 「黙らっしゃい!!」 途端に祖母は表情を険しくすると、あたし達の間に置いてあるローテーブルを手のひらで力強く叩きつけた。その大きな声と騒々しい乾いた音に、リビングの空気が凍りついたような錯覚を覚えて一瞬怯む。 祖母は睨み付けるようにあたしの顔を見つめた。 「あなたがだらしないから、わたしが代わりにあなたの将来をきちんと考えてあげてるの!労いこそすれ、反論するところじゃないでしょう!」 「で、でもそれとこれとは話が…」 違う、と続ける前に、 「さっきも言いましたけど、女は結婚してようやく本当の幸せをつかめるの。そういうものなの」 「時代錯誤だ!」 あたしの悲鳴じみた非難の声を祖母はあっさり無視する。 「それなのにあなたときたら、まともに働きもしない、家事もろくにこなせない。向上心もないだらしない性格で、おまけに恋人もいないし、それはまあ当然ですけど」 「…なにもそこまで言わなくても」 あまりの言われようにへこむ。しかもあながちハズレではないから尚更だ。 . 前へ |次へ |
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