《MUMEI》

「いつか、嗜虐が快感に変わると後悔するだろうな。」

この辺にいた虫なら目で殺せたであろう、学生はその場から消えてゆく。
俺には、絶対相容れないだろう思考だ。
昔付き合った彼女がDVの気があり、散々身体的にも痛め付けられた。
あの学生にはそれに通ずる……いや、もしかしたらそれを越えた何か得体の知れないものを本能で感じ取れた。


「……彼、少しだけ寂しそうだったね。」

二郎の感覚はわからない、そんな暢気なことを言うから色んな変態に付け入れられるのだろう。


「俺より寂しそう?」


「そうやってすぐふざけるんだから……あの子が独りぼっちな気がしたんだ、もっと本当だったら、優しく言えたんだよ。俺のこと心配してくれたんだ、きっといい子だよ。」

あいつの肩を持つなんて……!俺、寂しい……。
とか、口にするとまた二郎が困るんだろうな。


「ちょっと怖いかも、二郎が放って置けないタイプって深い所にいるから。」

高校生の頃とかね。


「大丈夫だってば。俺も全て信じられる程もう若くないよ。」

歳だから、と言うが衰えることを知らないそのしっとりと潤んだ瞳には何度騙されたことか。


「なんか、汗かいた……もう一回風呂入る?」

焦げ臭いし換気しつつ、体を暖めたい。

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