《MUMEI》
消える真実
コンコンとドアをノックする音.
樹紀は、恐る恐るドアの小さな穴から人を見た.

「……何の用ですか?」

ドアの向こうにいたのは、奴だった.
おかしい…、今までに一度も夜に来たことはなかった.
なぜ、今日に限って…―?


「君に話したいことがあって来た.」

「…その話は、何度も聞いた.帰ってくれ.」

「…君は、なんで自分だけがそんな能力を持っているのか不思議にならないか…―?」


…?
一体なんだ…?奴は.

「あなたは、誰?」

「…それは言えない.」

「…信用なりませんね.」


誰かも分からない人に、そんなこと言われたって
信じない.普通そうだが.


「では、なぜ俺が夜に来なかったか分かるか…?今まで.」

「…さぁ、家庭の事情でしょう.」

「何も分かってないんだな.君の故郷が危険な目に会ってるのだと言うのに….」

「僕の故郷がどうか…?」


なんだよ、一体.
お前が、俺の何を知ってると言うんだ…?


「お前は、王だ.シルバースブラインの….数か月前言われた.」

…おかしな事を言う奴だ.
そんなので俺をだませると思ってんのか….


「帰ってください.邪魔です.」

「…君は自分の故郷を捨てるつもりだな.父親も母親もお前のために戦ったと言うのに….
君の父親と母親は勇敢だったと言うのに….なんだ、その腰ぬけ野郎は.」

「あなたは本当に父と母を知っているのか…?」

「知っている.お前より…―.」


何者だろう….

奴は、一体なんだ?

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