《MUMEI》 「適当に座ってくれ.」 樹紀が言うと、奴は無言のままキョロキョロ辺りをうかがう. 「誰も聞きやしないさ.」 「違う.そのことではない…やはり、全て処分されたか.」 「…なにを?」 そう言うと、奴は黙った. 悲しい顔をしながら…―. 「話をすると言ったな….だが、時間がない.今宵の最終便まで間もない.」 「…最終便?」 「まぁ、いい.では…話をするとしようか.」 奴は、そう言うと急にまじめな顔になった. 一体…何が―? 「お前の父と母は王家.とくにお前の父さんはすごかった. シルバースブライン一最強の男とも言われたほどだった. 俺は、君のお父さんんが憎かった.俺は君とお父さんの次に強かったから….」 「次…に?あなたが….」 あまり、強そうには見えなかった. ヒョロヒョロしてるし…. 「…シルバーは能力.ブラインは、武器…」 「…?」 「シルバースブラインという国は大きく二つに分かれている.一つはシルバー. もう一つは、ブライン.この二つを治めていたものが、君のお父さん、シルバー・ディ. 君のお父さんは、シルバーの民だ.そしてお母さんは、ブライン・アディ. お母さんと、お父さんは違う民主.しかし、違う民主で結婚してはいけないと言う決まりはなかった. そして、その子供シルバー・ブライン.そう…君だ.」 「…僕は、樹紀だ.そんな名前ではない.」 そうも構わず、奴は話し始める. 「先ほど、俺が君の父さんを憎かったと話したな?」 樹紀は、うんと言う代わりに頷いた. 「君の父さんを憎かったものはほかにもいた. 俺は、殺してやりたかった. そのために、そう言う団を結成したのだ. だが、しばらくすると俺は君の父さんの凄さに気付いた. だから、団をぬけたのだ.その数日後だった.殺されたのは.」 「…」 「団の一員が、城に押し掛けて行った.父さんは懸命に戦ったが 敗れた….母さんも.」 樹紀は黙った. 「それから、次の王を決めたが長くは続かず、国は不安定になっていった. いろいろあって、シルバーとブラインが仲間割れをした. …だから、シルバーの民とブラインの民の間にできた子は殺された. ここにいれば、のち君も….」 ばかばかしい. そんな話誰が…. 「お願いだ!!俺と一緒に、シルバーズブラインに来てくれないか?一緒に国を、もう一度!!!」 奴は、土下座をした. こんなに、プライドの高い奴が、土下座を…. 信じるしかない. 奴を….父さんを…. 「分かった.同行する.」 奴は、無言のまま、いままでにない笑顔を俺に見せた. 前へ |次へ |
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