《MUMEI》
恋愛相談
都内のとある稽古場。
彼は、もうすぐ公演をむかえる舞台の稽古に、全神経を集中させていた。

「梶原くん、ここは、もうちょっと苦しそうに。」
「はい。」

演出家の指摘に真摯に頷く彼、梶原龍彦は、今注目の若手俳優だ。
12才で舞台デビューしてから、現在ではドラマや映画にも活躍の場を広げている。今年28才を迎えるにしては幼い顔立ちと、疑いようのない実力で、多くのファンをとりこにしていた。

「それじゃあ、30分休憩。」

とたんに、彼の肩から力が抜けた。くせのある茶髪を掻き上げながら椅子にすわり、小さくため息をつく。
何気なく携帯をひらくと、一通の受信メール。


今夜、3人で飲もう。
敬一 』

たったそれだけの文に、龍彦は大きな瞳を優しく弛めた。
彼の方から飲みに誘う時は、決まって何か面白いことが起こるときだ。
両手を使ってピコピコと返信を送ると、龍彦は楽しそうに頬笑んだ。

次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫