《MUMEI》

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俺はいつも友達と一緒に帰宅する。連れはみんな徒歩なので、俺もそれに合わせて自転車を転がして歩く。
みんなでバカ話を繰り広げながら帰る途中に、兵隊の格好をした若い男がこちらへ歩いてくるのに気づいた。このままいくとヤツとすれ違うパターンだ。またしても面倒な展開である。
みんなはその男の姿に気づいてないようなので、俺も真似して素知らぬ顔で兵隊男とすれ違った。
すると、すれ違いざま、男がぐるんと首を巡らせて俺に言った。

「見えてるくせに」

ああ、見えてるよバッチリな!やんのか、コラァ!兵隊野郎をドつき倒したくなる衝動に駆られたが、ここはグッとこらえる。ヤツは子供だから俺が大人にならないと。自分を励ますもちょっと納得いかない。


友達と別れてひとりになると、大きなマスクをした女が声をかけてきた。

「ねぇわたしキレイ?」

答える代わりに右ストレートをお見舞いする。あまりの痛みに女はうずくまって立てないようだ。やりすぎちゃったかな。反省したので偶然持っていたべっこう飴を女にやることにする。女はちょっと嬉しそうだった。
それにしてもさっきから携帯が鳴りっぱなしだ。絶対出てやらないと心に誓ってシカトする。


家の近くまでたどり着くと、ゴミ捨て場で生ゴミをあさっている犬と遭遇した。よくよく見ると、犬なのにオッサンの顔をしている。オッサン顔の犬は俺を見つけるなりシッポを振った。

「同情するならメシをくれ!」

生意気な口をきいたので、その辺りに落ちていた石をオッサン目掛けてブン投げた。見事ケツに命中。「暴力ダメ、絶対!」と抜かしながらオッサン犬はどこかへ消えた。散らかしたゴミ、ちゃんと片付けろよ。近所迷惑だろーが。


ようやく帰宅。何だか疲れた。
携帯を見る。着信履歴49件。アイツか。ふざけんな、暇人が。


家族みんなで食事をとって風呂に入り、自分の部屋に向かった。
ふかふかのベッドにダイブする。その時気になっていたことがあったので、ベッドの下を覗いた。見知らぬ男と目が合う。取り合えずボコって窓から追い出した。大の大人がメソメソ泣くな、みっともない。
窓をきちんと閉めたのを確認してから改めてベッドで横になる。携帯がけたたましく鳴り響く。ムカついて電源を切った。くそったれ。
そんなことをしていたら、いつの間にか眠ってしまった。


真夜中、不意に目が覚めた。金縛りにかかったようで動けない。しかも天井に女がへばりついて、こちらを見下ろしている。
勘弁してくれ、何時だと思ってるんだよ。
女をどうにかしたかったが、睡魔には勝てない。俺は眠ることにした。明日も学校だし。



―――以上が俺、灰谷 圭吾(ハイタニ ケイゴ)の日常だ。



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