《MUMEI》
『怪奇倶楽部』発足
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憂がその話を俺に持ちかけてきたのは、ある日の放課後だった。

彼女は昇降口の正面にある木陰のベンチに座り、俺を待ち伏せていたようだった。友達と一緒に帰ろうと思っていたのだが、ベンチからこちらへ念を送っている憂の姿に気がつき、友達に、急用を思い出したので先に帰ってもらうよう頼んだ。友達も憂の姿に気づいて、別れ際に俺達の関係を尋ねてきたが適当にはぐらかし、彼女のもとへ近寄った。

俺が彼女の目の前にたどり着いた時、何の前置きもなくいきなり切り出した。

「ちょっと相談があるの」

相談?と繰り返すと彼女はこくんと頷く。
それからじっと俺のズボンのポケットを注視した。

「…また携帯が鳴ってるわね」

いつものごとく携帯の振動音が僅かに聞こえる。

「いつものことだ、気にするな」

俺はポケットに手を突っ込みこっそり携帯を確認する。ディスプレイにアイツの番号が表示されていた。ふざけんな。

着信を無視して、俺は憂に向き直る。

「それより相談って何?」

憂は思い出したように、話し始めた。

「同好会を設立したいのだけど、協力してもらえないかしら?」

「同好会?」

訝しげな俺に彼女は鞄から一枚の紙を取り出し、それを差し出してくる。俺はそれを受け取って眺めた。学校におけるクラブ・同好会についての申請書のようだ。

「『怪奇倶楽部』…?」

クラブ名称の欄に書かれていた文字を読み上げる。憂は誇らしげに頷いた。

「この世にはびこる怪奇現象を研究するの。素敵でしょう?」

申請書から目を離し、憂の顔を眺める。表情は無いものの、彼女はどこか満足そうだった。
俺は、それで?とため息混じりに先を促す。

「一体俺は何を協力するんだ?」

憂は待ってましたと言わんばかりの顔つきで語り出す。

「その怪奇現象の真相究明のために、あなたの能力をぜひ発揮してほしいのよ」

そんなことだろうと思った。



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