《MUMEI》

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工藤君は弱りきったようにか細い声で答える。

「警察が僕みたいな子供の話をまともに聞いてくれるはずないよ…単なるイタズラだって取り合ってくれないのは目に見えてる」

それに、と続ける。

「送りつけられたあの気持ち悪い御札とか人形って、何か霊的なものなんじゃないかな?もしかしたら沢井は俺と彼女に呪いをかけてるのかもしれないって思ったら怖くて…」

「呪い…?」

その言葉を憂は耳ざとく拾う。どうやら興味を引いたようだ。
工藤君は項垂れるように力なく頷いた。

沢井にストーキングされるようになってから、殺される悪夢や夜中に誰かから首を絞められたりという怪奇現象に悩まされているらしい。それは日に日にひどくなり、時には命の危険すら感じることもあるという。

「このままじゃ僕は、アイツに呪い殺されてしまうかもしれない。アイツも『もっと大変なことになる』って不吉なことを言っていたし…それにレイコだって危ない目にあってしまうかも…」

もしも沢井の嫌がらせが本当に呪いとか霊的な何かであるなら、『怪奇倶楽部』に相談すれば解決の糸口が見つけられるかもしれないと工藤君は思ったようだ。

一息に捲し立ててから彼はすがるような眼差しで俺達に訴えた。

「頼むよ、僕達を助けて!沢井を止めてくれよ!」

この通りだ!と頭を深く下げる。

俺は憂を見遣る。

「…どうする?」

返事は容易に想像できるものの、一応リーダーである彼女に指示を仰いでみた。

憂は無表情のまましかし、好奇心で輝く瞳を工藤君に向けてゆったり答えた。

「…話はわかった」

淡々と響く彼女の声に、工藤君は恐る恐る顔をあげる。彼女は彼のやつれきった顔をまっすぐ見据えて、唇の端をつり上げた。

「そんなに思い悩んでいるのなら放っては置けない。わたし達が協力するわ」

そう言いきって憂は俺の方へ視線を流す。


「『怪奇倶楽部』として検証しましょう」


面倒なことになった。

ため息をついている俺の傍らで、工藤君がしきりに憂へ感謝の言葉を述べ、憂は得意気な顔をし、その間で部室のヌシであるちっちゃいおじさんが憂のことを『コイツは凶悪犯だぞ!』と憤っていた。



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