《MUMEI》

「ねぇ、愛香!あの茶髪のちょっと派手な男の子かっこよくない?」


あの男の子?

亜希が指差したのはちょっとどころじゃなくて、結構派手な男の子だった。

派手めなグループの中で一際目立っている奴のこと。

…てかあれって確か…。


「同じクラスの矢崎健太じゃん」

「そうそう、梨華子!矢崎くん!一目見た時からかっこいいと思ってたんだよね〜っ」


…やっぱり…同じクラスのか。

てか、私の苗字"山崎"だから、確か出席番号、私の前かな。

席は一番後ろと一番前で分かれてたから、関わりなかったけど。

…亜希の好きそうなタイプ。


「ねっ!愛香!かっこよくないっ?」

「え…あ、うん、綺麗な顔立ちしてるね」


かっこいい、とは思う。

付き合いたい、とかは思わないけど。


亜希がキャーキャーうるさいからか、その矢崎という奴がこっちに視線を向けた。

その時、一瞬目が合った気がしたけど亜希が"目合ったかも!"とか言ったから多分気のせい。


何の興味もなかった。

別に関わることもないと思ったし。


…だけど、まさかあんなことになるなんてね。

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