《MUMEI》

「お母さんっ…!!」

「はぁ、はぁ…。ひなみ、ごめんなさいね。
昨日、来れなくて…。それにしても、よくわかったわね。」

お母さんは、おそらく職場から急いでここまで来たんだろうなぁ、と乱れた呼吸を聞いて思った。
私のために、急いで来てくれたんだな、と思うとなんだか嬉しくなる。
お母さんは、私が6才のとき離婚し、それからというもの、女ひとつの手で私とお兄さんを育ててくれた。
朝から夜まで、ずっと働いて大変なのに…。
それでも、仕事の合間にこうやって来てくれる。

「お母さんの、足音でわかった。お母さんの足音ってね、なんか独特というか…、わかりやすいの。
それに、いつも大体午後にくるから、慌てて。」

「そっかぁ〜。じゃあ、今度からゆっくり来るかな?
そーえば、ひなみ昼ごはんは?」

「ん、まだ。お母さん、悪いけど取ってきてくれるかな?
ごめんね。」

「えぇ、いいわよ。じゃあ、ちょっと待っててね。」

病室のご飯は、自分で決まって置いている場所に取りにいかなくては、ならない。
だから、歌音さん、お母さん、りぃくんやお兄に、いつも取りに行ってもらっている。

しばらくすると、お母さんが帰ってきて、私にご飯を食べさてくれた。

「お母さん、私ひとりでご飯くらいは、食べれるんだよ?


そう、私が言ってもお母さんは、私にご飯を食べさた。

「いいじゃない、コミュニケーションよ、コミュニケーション!!ほら、かぼちゃ…あ〜ん 。」

「お母さん…私これでも一応中2だからね?」

「うん?知ってるわよ?」

なのに、あーんって…どうなのか…。
マザコン、じゃないか?これは。

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