《MUMEI》

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とにかく聞き込みの話を簡潔にまとめると、沢井は大人しいが芯は強く、優しい心の持ち主のようだ。


そんな人間が工藤君にこんな気味の悪い嫌がらせをするなんて何となく納得がいかない。


返事を聞いて工藤君はあからさまにガッカリしたような顔をする。

「…取り合えず、沢井に直接話を聞いてみるよ」

俺はフォローのつもりで工藤君にそう言った。彼は、よろしく…と覇気のない声で言い、俺のそばから離れていった。


工藤君と入れ替わるように今度は憂がやって来る。

「工藤君、何かあったの?」

無表情のまま尋ねてくる彼女に俺は相変わらず被害に遭っているらしいことを伝えた。
憂は顔色を変えずに言う。

「わたしも色々調べてみたのだけどなかなか良い情報がなくて…」

何を調べているのか尋ねてみると、彼女は淡々と答えた。

「わたしがいつも閲覧しているインターネットのサイトで呪いにまつわるアイテムを検索してみたの。だけどヒット数が多すぎて絞りきれなかったわ」

サイトによると呪いの用途によって使用するアイテムが変わるという。それよりも、そんなサイトをいつも利用しているという憂はやっぱり頭がおかしいのではないかとちょっと不安になった。

「ところでその袋は一体何?」

彼女は俺の机に置いてあるビニール袋を指差した。例の工藤君に送られた品だと答えると、憂は俄然興味を示した。断りもなく勝手に袋をあさり始める。

「すごいわ…こんな禍々しいものを送ってくるなんて」

御札や写経された紙を眺めながら恍惚とした表情を浮かべている。好きなだけひとしきり物色してから、彼女は俺に言った。

「この中のひとつをわたしも借りて良いかしら?」

いきなりそんな提案をしてきたので、一気に不審に思った。借りて何をするつもりだ。

「…何で?」

恐る恐る理由を尋ねると憂は表情を変えずに淡々と答える。

「写真をパソコンにアップして、詳しい人に聞いてみるわ。オカルトサイトの掲示板で知り合った人なのだけど、そっち方面の知識がとても豊富で信頼できるから何の呪いなのかわかるかもしれない」

そいつは一体何者だ。聞いただけでも怪しい。

一抹の不安もあったが、憂が珍しく意欲的なので任せることにした。実際、この不気味なものは一体何の意味があるのか確かに気になる。


進展があったら報告すると言って、彼女は袋の中から一番気持ち悪い人形を選び、自分の席へ戻っていった。


憂の後ろ姿を見送ってから、俺はため息をつく。



―――さて、

『張本人』に話を聞いてみるとしよう。



昼休憩、俺は手早く食事を済ませ工藤君から預かった御札を一枚ポケットに突っ込むと、ひとりで教室を出た。



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