《MUMEI》

コイツを責めても始まらないし、どうせあんな派手な奴だからすぐに見つかるだろうと高をくくっていたらコイツの言う通り人混みが凄くて見つけられなかった。

「小せぇから見つかりにくいのかもな」
「ケータイあいつ持って行ってないし…」
「ケータイ…そっか」

袂の辺りに入れていた自分の携帯を取り出すと、さっき会った奴らに電話を掛けた。

「…うん、さっき居た金髪の可愛い方…どっちもとか言ってんじゃねーよ…」

とにかく女物の浴衣を着ていた可愛い方だと桃郷に伝えると、そっちもまだその辺に居るってんで、他の仲間に連絡してくれると言ってケータイを切った。

「俺たちは交番の方に行こうぜ、もしかしたら預かってもらってるかもしんねぇからさ」
「うん…」

かなたが迷子になったのは自分のせいだと思って気落ちしていたはるかの肩を軽く叩くと、背中を押して一緒に近くの交番に向かった。

= = = = = = = = = = = = = = = = = = = =

「七森先輩も花火大会見に来たんですね」
「うん、でも僕も一緒に来た友人とはぐれちゃってね〜…」
「俺とおんなじだ〜♪」

僕が見つけた時のかなた君は今にも泣き出しそうなおもしろい顔をしていたけど、今は同じ迷子という境遇にある僕に安心したのか今はニコニコと笑っていた。

「あっ、そうだ先輩ケータイ持ってませんか?」
「持ってたら迷子になってないよ」
「そっか…」

かなた君はそう聞くと分かりやすいくらいガッカリと肩を落としていた。

「かなた…ちゃんでいいかな?」
「えっ///」
「ほら、浴衣がさ…」

女の子モノの浴衣を着ているのに”君”は無いと思ったから、今だけは彼の事を女の子っぽく呼んでみようと思って、そんな事を聞いてみた。

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