《MUMEI》

「可愛いね…かなた君」

ここまで完璧に女装しているかなた君が愛おしくなって、彼の身体をギュッと抱きしめた。

「先輩…///」

さっき乱してしまったかなた君の浴衣の裾を直していると、かなた君の身内なのか知り合いらしい誰かがかなた君の名前を言いながら走ってきた。

= = = = = = = = = = = = = = = = = = = =

先ほど別れたかなたの彼である武君から、かなたが迷子になったと連絡が入った。

「どうしたんですか?」
「かなたが迷子になったそうだから、見つけたら連絡してほしいそうだ」

かなたは勝手に歩き回るのでよく迷子になるが、かなたは金髪の派手な見た目なのでいつもすぐ見つけられるから安穏と構えていたが、アキラは心配そうにソワソワしていた。

「大丈夫かな…」
「すぐに見つかるだろう」

ほんの少し過ごしただけなのに、もうこんなにも俺の弟の事を心配してくれている。

アキラはなんていい子なんだ、やっぱり俺の目に狂いは無かったんだな。

「かなた君だったっけ、あの子甘えん坊で寂しがりっぽいから…一人で居たら心細いんじゃないかな」
「そうだな…」

確かに、赤ん坊の頃のかなたは家族の誰かが見えなくなるといつも火が着いたように泣き出す事があった。

今日アキラが双子達の浴衣の着付けをしてくれたらしい、それでも小一時間ぐらいだ、たったそれだけの時間でかなたの性格まで分かってくれるなんて…。

彼には”育てる”という才能があるのかもしれない。

部屋にある花だって、彼が持って帰ってきた時は萎れていたり元気が無かったりするのに、彼が手入れをしただけで綺麗な花を咲かせたり、どんどん増えていったりしていた。

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