《MUMEI》

「……克哉…さん」

俺に気付いたアキラは関を切ったように泣き始め、手で顔を覆って膝を付いてうずくまってしまった。

「ごめんなさい…こわかったけど、黙ってられなくって…」
「あの子達は大丈夫だ、立てアキラ」

アキラに肩を貸し、支えて立ち上がらせると、はるかに携帯を掛けた。

『うん…兄さん、かなたは大丈夫だよ、いつも通りアイツにくっついてるから』
「あぁ…それなら良かった」
『そっちこそ…あの…』

俺の横にいるアキラに目を向けると、やっと自分で立ったアキラが俺の方を見てコクリと頷いてくれた。

「大丈夫だ…」

それだけを伝えると、礼を言って携帯を切った。

「どうしよう…僕のせいで、かなた君がイジメられちゃったりしたら…」

やっぱり気に病んでいるようで、握った彼の手は冷たくかじかんでいた。

「大丈夫だ、その為のボディーガードとして武君が一緒に居るんだからな」

人の居なくなった川岸の土手で、彼の冷えた身体を抱きしめる。

「私の言いたかった事を、言ってくれて…ありがとう」

双子を育てたと言っても、まだ兄としての自覚が足りなかったと言う事を、ここでアキラに気付かせてもらったような気がした。
  

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