《MUMEI》 …げっ…。 数学教師は、手を震わせながらこっちを見ている。 生徒たちの視線は、すべて私たちに注がれている。 …最悪だ。 思ったより、私たちの声は響いていたっぽい。 梨華子の方を見ると、見事な苦笑い。 亜希の方を見ると、何故か"羨ましい〜っ"という眼差し。 「お前ら…夫婦漫才なら、他でやらんかっ!」 「夫婦とか違うわ、ハゲ!」 「ハゲとは何だ、山崎!おい、矢崎はちゃんと謝ってくれるよな?」 「先生〜、それより相談があるんですが〜」 「…や…矢崎…お前…」 勢いよく立ち上がってしまった私と、のろのろと立ち上がった健太。 数学教師は、今にも手に持っているチョークを投げてきそう。 …ほんとにありえない。 「すみませんでした、ハゲ」 「なっ、山崎お前…」 「あ、愛香が謝ってるから俺も謝っとこ〜先生ごめんね」 「矢崎お前は…」 教室中が大爆笑の渦。 数学教師は持っていたチョークを落とした。 …まじ、この席ないわ。 私はのろのろと座った健太を思いっきり睨んでやった。 前へ |次へ |
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