《MUMEI》

「でも…矢崎健太、まじで愛香狙ってるんだね」

「は!?ちょっと冗談やめてよ、梨華子…」


頭のクラクラハンパない…。

うわー、熱でもあるのかな。


「噂で聞いたよ〜。矢崎の奴、まじで愛香がターゲットって」

「えーっ!ショックショック!」

「なら、亜希、入れ替わる?」


噂は噂。もし、ほんとでもそんなん無視無視。

何で私が健太なんかに狙われなきゃいけないの。

あんな馬鹿野郎、ため息しかでない。

ほんとに誰か私と入れ替わってくれないかな。


「愛香頑張れ、心から応援してるからさ」

「梨華子…ちょっと…」


あー、ダメだ。

ちょっと、もうダメだよ。

何かまたあいつの隣で授業を受けると思うと憂鬱で仕方ない。


「…ごめん、ちょっとお手洗いに…」


弁当箱を片付け、頭を抑えながらフラフラと立ち上がる私。

梨華子は大爆笑だけど、亜希はまじで心配し始めたっぽい。

…ほんとに亜希と交換したいな、まじで。


私はどうにか意識を保ちながら、教室を出た。

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