《MUMEI》

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すぐ後ろにフランス人形のような出で立ちの女の子が立っていた。つばの広い帽子をかぶり、ウェーブした長い髪の毛が広がっている。俯いているので顔はよく見えないが、赤い小さな唇を三日月の形に歪めて笑っているようだ。俺も一応微笑み返してやった。まだ子供だが大人になればなかなかの美人になるだろう。

もともと俺宛にかかってきた電話だ。アイツが俺の後ろにいるのは当たり前である。

「な、何?どうしたのよ?」

おののくように沢井が言った。たぶん彼女には少女の姿が見えないのだ。俺は彼女に向き直り、答える。

「電話の通り、今俺の後ろにいるよ」

沢井の顔がひきつる。

「で、デタラメ言わないで!」

「デタラメじゃないよ、君が見えないだけだ」

飄々と答える。だってホントだし。背後にいるアイツも頷いているようだ。

「…い、いい加減にしてっ!!」

顔色を変えない俺に、沢井はついにキレた。

突然俺の携帯をポイッと投げ捨て、俺の襟首を思いきり掴んだ。緊迫した空気に後ろにいるアイツが息を呑む気配を感じる。

俺の顔を無理やり引き寄せ、沢井は鬼のような形相で捲し立てる。

「そんなこと言ってわたしをおどかそうとしてるワケ!?あんた頭おかしいんじゃないの!?」

化けの皮が剥がれ始めたようだ。俺は内心ほくそ笑む。

間近にある彼女の顔をじっと見返し、そうかもね、と冷たい声で答える。


「でも、君だって同じようなことをしてるだろう?」


言葉の意味を瞬時に察したらしく、沢井の表情が固まった。俺は続ける。

「君、工藤君に嫌がらせしているよね?」

静かにだが断定的にそう尋ねる。沢井は無理やり笑顔を作って、何のことよ?ととぼけた。往生際の悪いヤツだ。


俺はポケットに手を突っ込んで、ある物を取り出し、沢井の目の前にそれを突き出した。工藤君から預かった御札である。

御札を見て沢井は怯んだようだ。俺の襟から手を放し、御札を注視したまま後ずさる。ちなみに後ろのアイツもその御札にビビったようで俺から少しだけ距離を取った。



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