《MUMEI》
最近のマスク女
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―――放課後。

沢井との件でムシャクシャしていたので、気晴らしにこれからカラオケに行こうかとクラスメイトと相談していたら、憂が近くまでやって来た。どうやら俺に話があるらしいのだが、1メートルほど離れた場所からこちらを見つめるだけでそれ以上近寄ろうとしない。

どうせしょうもない話だろうと思ったので無視しようとしたのだが、クラスメイトが変に気を利かせて、カラオケは今度にしようと勝手に決めてさっさと帰ってしまった。ガッカリだ。

クラスメイトが立ち去ると入れ替わるように憂が俺のそばへ近づく。

「申し訳ないのだけど、今日の同好会活動はお休みにするわ」

淡々とそんなことを言った。早く帰宅して例の人形を調べたいらしい。同好会の休みは俺にとっては願ってもないことだったが、クラスメイトが帰る前に言って欲しかった。こうなったらさっさと帰ってふて寝しよう。

憂の提案に俺は二つ返事で了承して教室を出た。彼女も帰るらしく、そのあとをついてきた。



憂と並びながら自転車を転がして校門を出る。彼女は徒歩通学らしい。しかも途中まで帰る方角が同じだった。今まで何だかんだ一緒に帰ったことがなかったので、今日初めて知ることになった。

憂を放っておいて自転車に乗りさっさと帰っても良かったのだが、何となく彼女の横に並んで歩いていた。

「沢井さんについて何かわかった?」

歩きながら無表情で憂が尋ねてくる。今日だけは沢井について触れられたくなかったが、そのことに関して憂は無関係なので、仕方なくまだ痛む頬を撫でながら答えた。

「何が目的なのかはわからないけど、彼女が嫌がらせをしているのは間違いないな」

俺の返事に憂は、沢井に接触したのかしきりに質問してきたが、俺は適当に誤魔化した。とにかく今は答えたくない。あまりにカッコ悪すぎて。


しばらく歩くと桜並木の道に差し掛かった。ほとんどの桜が散ってしまって新緑に移り変わっていたが、なぜか花びらがヒラヒラと舞い落ちてくる。どこかに遅咲きの桜があるのだろうか。

そんなことを考えていると、後ろから聞き覚えのある声が俺の名前を呼んでいることに気がつく。俺と憂は同時に振り返った。

「おーい!こっち、こっち!!」

馴れ馴れしく声をかけてきたのは女で、しかも大きなマスクをつけている。例のマスク女だった。ブンブン手を振りながら神懸かったスピードでこちらへダッシュしてくる。

「久しぶり〜!今、帰りなの?」

マスク女は俺に駆け寄ると、元気だった?と普通に話しかけてきたので俺も、ぼちぼちかなと普通に受け答えた。隣にいる憂は俺達のやり取りに唖然としている。

「ごめんね、最近忙しくって!なかなか君を待ち伏せできなかったのよ〜!寂しかったでしょ?」

ペラペラと勝手に話し始める。かなりご機嫌なようだ。



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