《MUMEI》

血の気が一気に引いていく気がした。

うん、もう私が悪い。

こんな時にトイレに来た私が悪い。


「彰何やってんだよ、愛香に〜」

「ちょっと何カップか当てようと思って」

「離せ、変態野郎!こっのやろうっ」

「ちょっ!いって!」


男の急所を思いっきり蹴ってやった。

その場に倒れ込む変態野郎、山野彰。

健太は何が何だか、全く分かってない。


「は?え?えっと、え?」

「健太くんは早く教室戻りなさい☆」


ニッコリとそう言い、私はトイレへ直行。

奴の気配が消えるまで、絶対にトイレからでない。

別に授業に遅れても、どうってことないし。

それより私は自分の身を守る。


「また変なのに目つけられたわ」


健太だけでもダルいのに、変態野郎まで。

まあ山野の野郎はクラスが違うだけマシか。

何で私がこんな変な奴らに目つけらんなきゃいけないの。

私、そんな目立つことしましたっけ?

…うーん、してないわ。


「あーいかー!授業始まっちまうぞー!彰はもうどっか行ったぞー!」


お前も教室戻れっつーの!

馬鹿野郎も十分ダルいし、めんどくさいんだから。

席隣なのに、一緒に教室戻るとか絶対に嫌だから。

何か変な誤解もされそうだし。

亜希も何かうるさそうだし。

梨華子の苦笑いが最近はちょっと傷つくし。

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