《MUMEI》

ーーー…


「何か、愛香最近楽しそう」

「はっ?」


7月に入り、梅雨も終わって蝉も鳴き始め、夏が始まろうとしている。

そんなある時、亜希は何だかつまらなそうにそう言った。


「あの山野くんにまで愛香ちゃんなんて呼ばれてさ、ますます矢崎くんと仲良くなってるし!」

「…じゃあ、亜希も仲良くすればいいじゃん。ね、梨華子」

「まあ、確かに」


それに、別に楽しくない。

逆にダルいしめんどくさいし、毎日大変。

あの山野の野郎は相変わらず、変態だ。

すれ違う度に、絶対体を触ってきやがる。

この前は、トイレにまで入り込まれそうになった。

ほんとに、健太が隣の席になってから私の学校生活はめちゃくちゃだ…。


「じゃあ、私を紹介してよ、二人に!」

「「はああ?」」


流石の梨華子も、これには素早い反応。

見事に私とハモった。

"紹介して"って、はあ…?

亜希、そんなに二人と仲良くなりたいわけ?

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