《MUMEI》

ーーー…


「…という訳で、アンタのメアド教えて」

「へ?どういう訳で?…えっ!?てか愛香、メアド交換してくれんの!?」

「あー、もう、うっさい!いいから、とっとと赤外線!ついでに山野のも送って」

「ありがとーっ!愛香っ!」


ガキみたいに笑う、馬鹿丸出しな健太。

こいつのこの笑顔にも、何か慣れたかも。


私の携帯に"矢崎健太"という名前が表示された。

不思議と、躊躇いなく登録ボタンを押していた。

山野彰のには、ちょっと躊躇いを感じたけど。


私のデータを健太に送ると、奴は馬鹿みたいに喜んでた。

一体、何がそんなに嬉しいんだか。


「彰にはちゃんとメールしてやれよ!俺から聞いたって!」

「言われなくても分かってるから!」


まだ喜んでる矢崎健太。

私と目が合うと、お決まりのあのセリフ。


「ちゅーしていいっ?」

「…出来るもんならしてみな」

「……えっ?何かいつもと反応違う!」


私は健太に軽く笑いかけて、教室から出た。

すると、何か教室から雄叫びが聞こえて。


「…馬鹿過ぎる」


まあ、いっか。

変態野郎に比べたら、馬鹿野郎なんて可愛い方、だよね。

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