《MUMEI》

どうして。
頭の中で繰り返す。




二人はホテル街のうちの一つに入って行った。


鳥肌が立つ。寒さではない。恐怖からだった。












樹は長い空白から気付くと、手に重圧があった。脳が回転する。

確か、急いでその場から逃げたのだ。また、アヅサに頼ったのかもしれない。


斎藤アラタが樹の下でもがいていた。両手を首から離す。



「…………がはっ、」


シャツを引き裂かれ肌を露出させたアラタが肩で大きく息をしている。彼の首を絞めていたのだ。

樹は掌を見る。指が震えていた。


「……俺が、したのか?」

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