《MUMEI》
兄弟?
「武、お前に双子の兄がいるんだよ」


朝飯のトーストをかじろうとした時、親父がいきなり言い出した。

夏休み目前の終業式の朝に、なに言い出すんだ、この親父は。

つまらない冗談と判断した俺は、止めていた手を動かしトーストにかじりついた。


「…お前、信じてないだろう?」

「当たり前だろ?16年間生きてて、今まで双子の『ふ』の字も出さなかったのに。それを今日、何で突然に」


ため息混じりに言う親父に、口をモグモグしながら答えた。

だって、そうだろう?

物心ついた頃に『兄弟がいるんだよ』とか言われたらまだしも、そんな話一つ聞かされていなかったんだから。

そんな話、素直に信じる程子供じゃないんでね。

くだらない。

視線を親父から携帯へ移動させ携帯を開こうとした時、衝撃のひとことを言われた。



「父さん、お前と血がつながってないんだよ」



その後、俺が叫んだのは言うまでもないだろう。

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