《MUMEI》

遠くで、軽快な音楽が流れいる。

俺の体が、ゆっくりと上下に動いていた。


これは…

メリーゴーランド?


『…たけし』


俺の名前を呼ぶ声が聞こえる。

見ると、親父だった。


『パパ〜』


俺の口から出たのは、甲高い声。

しかも、パパって。


よく見ると、メリーゴーランドに掴まる手も小さくてぷっくりしていた。


これは、夢?

それとも、昔の記憶?


そう言えば、昔、近場の遊園地によく通っていたって親父が言ってたな。

俺はその時の記憶なんて、全然ないけれど。



ガクンッ!


身体が大きく揺れ、俺は目を開けた。


「あ、スマン。起こしたか?」


横を見ると、運転しながら親父がポリポリ頭をかいた。


「…もしかして、俺寝てた?」

「寝てたって言うか、爆睡?」


笑いながらいう親父から、視線を窓の外へと向けた。

景色は、出発した時と一変していた。

俺が住んでる場所と違い、山、田んぼ、木、民家。

俗に言う、田舎道を走っていた。


「親父にとって、俺ってなに?」


景色を見ながら、ポツリと出た疑問。

結婚もせず、男手ひとつで俺を育てた親父。

いくら親友の頼みでも、そう易々と受けられる話じゃない。

親父は子供好きな方だけど、それだけじゃない気がする。


親父はしばらく黙っていたが、観念したのか、その口を開いた。

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