《MUMEI》

乗りかかった舟とばかりにらフイリプは見世物小屋に向かうことにした、暫く小刻みに歩み続けると、時たま歓声が沸き起こる。それは余計に、彼の知的探究心を擽った。

期待が高まるにつれて、見世物小屋の建物に失望感が増した。張られたテントには三、四人程度が肩を寄せ合い顔を覗かせる程度のもので、行列にもなる訳である。


フイリプの隣にはひょろ長いこれみよがしにシルクのハンケチを胸に詰めた、成金の男、更にその横は上品な身なりの老夫婦だった、沸き立つ感動の客達を横目に、フイリプ達は目の前の下りている幕を、ただただ待っていた。

「サアサア、今日ご観覧の皆様は幸運だ本日お目にかけますのは、世にも珍しい手乗り人魚だよ!」

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