《MUMEI》

「その子だね…」

老人がニッコリ微笑んだ。

「そう、シルバース・ブラインだ」

「で、行先は?」

男二人が、話をしているのを
樹紀はじっと聞いていた。

「…ブラインか、シルバーだな」

奴が、そう言うと老人は、シルバーはやめた方がいいと言った。

「お前がいない時間、シルバーの民のなかの聖教者と能力者が仲間れをした。

「…!」

「いまでも戦いは続いている。行けば死ぬだろう」

老人はさっきまでの表情は嘘かのように
淡々と話し続ける。
奴は、青ざめた表情で話しを聞いていた。

「原因は、ブライン。もともと、聖教者とブラインの民は親しかったからの…。
シルバーと対立しても少しの民は、親しくしていた。
それを、能力者たちは知った。ブラインの民と能力者たちは仲が悪い。
ブラインと親しくしたいもの…対立したいもの…シルバーの中でも
二つに分かれてしまった」

老人はそれから一言も喋らなくなった。
やっと、奴が口を開けた。

「…そんなことがあったのか。では行先はブラインでいい。」

老人はニヤリと笑った。

「ブラインも、少々荒れておる。シルバーほどではないがの。
お前は行くのか??」

「あとから、追いつく予定だ。それまでお前がブラインを守れ」

「…では出発する」

老人は、奴が言ったことに頷きはしなかった。
今の話で、だいたい状況は分かった。
自分は何物かは、分からないが…―。

「早く来い…、ブライン」

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