《MUMEI》

外はすっかり暗くなっていた。

車は、山道を走っていた。

空にポツポツと星が瞬き始めていた。


あれから、車内でおにぎり(俺が寝ている間に親父がコンビニで買っていた)を食べた。

が、それからが長かった。

と言うか、長い!


目的地までがっ!


いまだに着かない目的地に、俺の我慢とお尻が限界にきていた。


「まだ、着かないのかよ?」


お尻の位置を変えながら聞くと、親父はあっ、と声を上げた。


「見えてきた。あの建物だよ」


親父が指差す方を見れば、木々の間から灯りが見えた。


「なんか、建物デカくない?」


灯りの数をかぞえてみると、どうも普通の家とは違って多い。

普通は横に2〜3個くらいしかないのに、ざっと見ても10個は超えていた。


「お城とかじゃ、ないよな?」


笑いながら冗談を言うと、親父は目を見開いた。


「よく、見えたな。父さんも初めて見た時は、驚いたよ」


はははっ、と笑う親父に俺は顔を引きつらせた。

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