《MUMEI》

俺は水瀬の表面しか見てなかったんだな……。





     グゥ





あ、お腹鳴った。飴……はもうないのか。皆に配っちゃったんだ。

周りに配り過ぎて結局自分の食べる分取り忘れるなんて……まさに今の俺じゃないか。




「おーす。遅いぞ」
コンビニを通り過ぎようとすると七生の声が!
こっちに向かってタックルしてきた。かわし切れず倒れる。鞄が無ければたん瘤が出来ていただろう。


「えっ、まだ帰ってなかったの!」
中から袋を下げた乙矢も出てきた。


「はい、飴のお返しに。」
乙矢がチョコをくれた……。飴、配った分返ってきたぁ。そうだよな、いつか配った分返ってくるんだ。



「乙矢……。あ、あ、あ、愛してる!」
ありがとうって叫ぼうとしたんだけど、勢い余った。

ついでに逞しい胸板に抱きついてしまう……。やっぱり乙矢は憧れる。こんなさりげなくイイ男になりてぇよ!


「えー……キモいよ?」
七生が明らかに引いている。



「キモくないから!

……帰るか。超お腹空いた。」

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