《MUMEI》
特権奪回
「歩雪、コト。ちょっとこの部屋から出てって」

「は!?何言ってんだよ秋葉!!」

「いいから出てて!!」

秋葉は徐に立ち上がったかと思えば、歩雪と紘の背中をドアに向かってグイグイと押し出す。

「ちょ、秋葉!?」

今宵が困惑しながら尋ねると、秋葉は手を動かしながら振り向いた。

「あんたに話があるのよ!!」

「話?」

なんだろ、話って・・・・・・?

歩雪は小さく溜息をつくと、頷いた。

「分かった。じゃ行くよ、紘。こー、リビングで待たせてもらうね」

「え?う、うん」

「ほら早く」

「何なんだよ!!ったく!!」

歩雪は、今宵に許可を得ると最後までわけがわからなかった紘を連れて階段を下りていった。

今宵は歩雪達の背中を見送ると、秋葉に目を向けた。

「どしたの?秋葉」

「どしたの、じゃないわよ!!あんたまだあたしに話してないことあるでしょ!?」

話してないこと?

何なんだろ・・・・・・?

うーん、と首を傾げて考える今宵を見て、秋葉は何かが切れたように一気に話し出した。

「もう、まだ誤魔化す気なの!?最近歩雪のこと避けてたでしょ!?何でなのよ!?」

「え?それはちょっと・・・・・・」

今更このこと聞かれるなんて思って無かった!!

どうしよう・・・・・・。

本当のこと話したら怒るだろうなぁ、秋葉。

「雪村。今話したら許してあげるわよ?たとえ『あたしに悪いから』とかふざけた理由でもね」

「恐いって!!!」

笑ってるようで笑っていない秋葉を見て、今宵は叫んだ。

秋葉には何でも分かっちゃうんだなぁ。

なんだかんだいってずっと一緒にいたし。

今宵は覚悟を決めて口を開く。

「この前秋葉に『幼馴染は歩雪くんといる時間が沢山ある』って言われた時にね、思ったの。私ってズルイことしてるんだなぁって」

「ズルイ?何がよ」

「付き合ってもいないのに、歩雪くんの隣にいた。『幼馴染』っていう立場に甘えてたの。こんなこと歩雪くんを好きな他の女の子達にも失礼なのにね」

今宵が秋葉の方を向くと、口を開く気配がないので続けた。

「だから歩雪くんと少しでも距離を置こうと思ったの。私は『特別な女の子』じゃないことを分からないといけないと思ったから」

今宵は口を閉じると、少し眉を下げながら笑った。

自分の言った言葉に傷つくなんてバカだよね・・・・・・。

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