《MUMEI》

「っバカ!!!」

「何〜!!さっきは怒んないって言ったじゃん!!」

「あんたあたしにまでじゃなくて他の女にも気を遣うってどういうことよ!!そんな理由であんなに無理してたの!?」

気づいてたんだ。

私の心の奥底に溜め込んでたものを。

秋葉は留まることを知らずに捲くし立てる。

「いいじゃない。『幼馴染』っていうことを利用したって!!他の女に悪いからって遠慮なんかすることないの。そんな甘いこと言ってたら誰かに先越されるわよ!!いいの!?」

「よくない!!」

今宵が間髪いれずに答えると、秋葉は口元を緩めた。

「じゃあいいじゃない。いつも通りで。あんたただでさえ気が弱いんだから、『幼馴染』っていう特権を使っても罰は当たんないわよ」

「秋葉・・・・・・」

「ていうかその特権で歩雪の隣にいてあげた方がいいわよ?あんたがいたほうが歩雪もいい顔するし」

ね、と秋葉は今宵の肩をポンッと叩く。

む〜、と今宵は考えると、ポツリと呟いた。

「・・・・・・じゃあその特権奪回します」

ずっと、じゃないもん。

ちゃんとこの気持ちが伝えられるまでの間だけ。

それまでだから。

「決まりね!!じゃああいつらのとこ行きましょ。そろそろ帰んないとだし」

「もう帰るの!?」

「今日は疲れたから。ほら行くわよー。・・・・・・あ」

秋葉は階段の手すりに手をかけたまま立ち止まった。

「あんたさっき『特別な女の子』じゃないって言ったけど、あれは違うわよ」

「何それ?」

「ま、あたしが言うことじゃないけどね」

秋葉は今宵を見て意地悪そうに笑うと、トントンと階段を下りはじめた。

変なの。

あ、私も言い忘れてたことがあった!!

「秋葉!!」

「何よ」

今宵は階段を下りている秋葉を呼び止めて、笑みを浮かべた。

「ありがと!!」

「何言ってんのよ」

秋葉は少し肩をすくめると、歩雪達が待つリビングへ向かった。

「よかった。秋葉に話して」

このままだったらずっと歩雪くんから距離を置いてたかも。

秋葉が言ってくれた言葉が嬉しかった。

悩んでることを吹き飛ばしてくれるぐらい。

「ありがと」

今宵はもう一度呟くと、秋葉の後を追った。

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