《MUMEI》
確信犯?
紘達が帰った後、歩雪はリビングで椅子に腰掛けていた。

今宵が引き止めたからだ。

今日は歩雪くんにも迷惑かけちゃったしね。

「歩雪くん。紅茶でいい?」

「ん。ありがと」

「ちょっと待っててね!!」

今宵はしばらくすると、紅茶の入った2つのティーカップを持ってリビングに戻った。

「はい!!レモンティーだよ!!」

「ありがと」

歩雪は今宵からカップを受け取ると、ゆっくりと口に含む。

こんなに歩雪くんが近くにいるのって久しぶりかも。

ていうかさっきまでこうして一緒に紅茶を飲むなんて思いもしなかったもんなぁ。

・・・・・・でもよかった!!

紅茶をニコニコと飲む今宵を見て、歩雪は持っていたカップを置いた。

「よかったね、秋葉に話し聞いてもらって」

「ん?」

「こーがオレをこないだみたいに避けないってことは、なんかあったんでしょ?」

「はわ!!ごめんなさい〜」

口元を緩めている歩雪を見て、今宵は顔を赤くした。

こないだは思いっきり避けちゃったもんな〜!!

「あれ、結構寂しかったんだよ?まぁ元に戻ってくれたからいいけど」

「・・・・・・聞かないの?理由とか」

口元を緩めたままの歩雪を見て、今宵はおずおずと尋ねた。

聞かれると思って覚悟してたんだけどなぁ。

「ん。いいよ、もう。今日はこー頑張ったから」

「歩雪くん・・・・・・」

「でも多分次やられたら、何するか分かんないけどね」

「ええ!?」

恐ろしいことをサラッという歩雪に、今宵は思わず叫んだ。

歩雪くんって・・・・・・。

「大丈夫。もうさせないようにずっと捕まえてるから」

「・・・・・・へ?」

何か今また変なことをサラッと言わなかった?この人。

今宵はわけがわからず歩雪を見つめたままだ。

そんな今宵を見て歩雪は意地悪そうな顔でクスッと笑う。

「今は言わないけど。覚悟しといて」

「え?」

「こーが隠し事してたから、オレもまだ内緒。それまで考えててよ」

「何それ!!」

歩雪はまたクスッと笑うと、席を立った。

「じゃあ帰る。紅茶ご馳走様」

「あ、うん・・・・・・」

慌てて立ち上がろうとする今宵を、歩雪は頭に手をのせて制した。

「いいよ、ここで。じゃあね」

「また、ね?」

今宵は歩雪の後ろ姿を見送ると、ヘタッとまた椅子に腰掛けた。

「な、何だったの?歩雪くん・・・・・・」

いつもと違かったし・・・・・・。

さっきの歩雪くんの顔を思い出すとまだドキドキする!!

ていうか、歩雪くんさっき何て言った?

『ずっと捕まえてるから』・・・・・・?

「えぇぇぇ!!!?」

今宵の叫んだ声が歩雪まで届いていて、その声を聞いて小さく笑っていたとかいなかったとか。

前へ |次へ

作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ

携帯小説の
(C)無銘文庫