《MUMEI》

「なあ、愛香〜」

「もう何よ!」


…はっ。つい、大きな声出してしまった。

最悪。めちゃくちゃ恥ずかしいじゃん。

もうレジ行きたくない。

店員、こっちめっちゃ見てるもん。

もういいや。得に何か欲しいってわけじゃないし。


「あれ?愛香、何にも買わないの?」


あんた、この空気察知しろ。

私が今どれだけ恥ずかしい思いしたか分からないのか!

元はあんたが悪いんだから…。


「別に欲しいもん得にないから」

「なあ、てかさ!」

「ゴメン!私、すぐ帰らなくちゃいけないから!」


こうでもしないと、きっと奴はいつまでもついてくる。

私は健太を無視して歩き出す。

奴は諦めたのか、もう何にも言ってこなかった。

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