《MUMEI》 しんと、静まり返った空間であった。 「こちらの商売道具は、一般に飼育困難で、売買は出来ません。」 小肥りな恰幅のよい風貌をした男から発する、飼育や商売道具という言葉は、フイリプを散々酔わせた夢心地から覚醒させた。 毛むくじゃらの大男が、フイリプ達の前に立ちはだかり、水槽を幕で遮る。 大男を顎で使う小肥りの男は、さながら団長の様だ。 これみよがしに、小肥りの男が、陶器の匙で、水槽の中へ金色の液を垂らしていた。 金糸のごとく、幾重にも絡まりながら水中を漂うそれを、舌を出し舐めていた。 それぞれの思惑は、ともかくとして、四人は強制的に見世物小屋を追い出されていた。 前へ |次へ |
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