《MUMEI》

しんと、静まり返った空間であった。

「こちらの商売道具は、一般に飼育困難で、売買は出来ません。」

小肥りな恰幅のよい風貌をした男から発する、飼育や商売道具という言葉は、フイリプを散々酔わせた夢心地から覚醒させた。
毛むくじゃらの大男が、フイリプ達の前に立ちはだかり、水槽を幕で遮る。
大男を顎で使う小肥りの男は、さながら団長の様だ。

これみよがしに、小肥りの男が、陶器の匙で、水槽の中へ金色の液を垂らしていた。

金糸のごとく、幾重にも絡まりながら水中を漂うそれを、舌を出し舐めていた。

それぞれの思惑は、ともかくとして、四人は強制的に見世物小屋を追い出されていた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫