《MUMEI》

「やっぱりさあ…矢崎は愛香のこと、ガチで好きなんじゃないかな〜」

「私も同感〜!しかもこの前彰くんがちらっと、"健太も素直になれよ"とか言ってたし!」

「しかも…あんた、それで頭ん中グシャグシャってさ…愛香も、もしかして矢崎のこと…」


それはない!それはない!

首を思いっきり横に振った。

私が…私が健太のこと…ありえない!

あいつは馬鹿野郎で、面倒な奴で、ダルい奴で…。

"俺も寂しい"

そんなの、気にしてた私が馬鹿だった。

ただのその場の思いつきだ、あいつの。


「愛香も素直じゃないね」


梨華子の言葉がグッと胸に突き刺さる。


「馬鹿でも、だるくても、面倒でも、結局相手にしてんのはどこのどいつよ〜」


亜希のごもっともな言葉。


私なの?

一番馬鹿なのは。

私なの?

一番面倒な奴は。

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