《MUMEI》

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「つーかそんなことより期末テストだろ」

俺が訂正すると、憂は涼やかな顔で答える。

「そんなことってずいぶんな言い方ね。定期テストは年に5回もあるけれど、特番は1回しかないのよ。成績はあとから挽回できるけどテレビは見逃したら取り返しがつかない」

回数の問題か。

俺は参考書のページをめくりながら、あのさ…と諭すように言う。

「俺達は学生なの。でもって学生は勉強するのが本業だよな?君はテレビの特番とか奇妙な同好会活動の方が重要だと思ってるみたいだけど、俺は断然テストの方が大事なわけ」

ここまで言えば納得するだろう。
と思ったのが甘かった。

「何度も言うようだけどあなたに決定権はない。わたしにあるの」

憂はさらりとそんなことを口にした。完璧に履き違えている。横暴だ。もはや暴君というかわいいものではなくてここまできたらただの独裁者だ。

俺が唖然としている隙に彼女は、来週の特番の感想文作成と《写り込む女》について独自に調べるよう命令したあと、

「本日の活動は以上よ、解散」

そう言い残してさっさと部室から出ていった。

取り残された俺はひとつため息をつき参考書を片付けて、部室を出ようとした。疲れきって勉強どころの話ではない。

ドアを開き、外へ一歩踏み出そうとしたそのとき、


『おいおい、ちゃんと椅子片付けてけよっ!!』


甲高い声が聞こえ、ゆっくり部屋の中へ振り返るといつの間にかちっちゃいおじさんが俺が使っていた椅子の足元に立っていた。憂が座っていた椅子も出しっぱなしだった。

おじさんは少し怒ったような顔をして2つの椅子を指差している。

勘弁してくれ。

俺は一旦部屋の中へ戻り、おじさんに注意された通りパイプ椅子2つ共片付けて再びドアへ向かった。

外に出る瞬間、

『歯磨けよっ!』

俺の背中におじさんが明るい声でそう言った。ドリフかよ、心の中で突っ込んで、俺はようやく家路についた。



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