《MUMEI》
デマか真実か
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翌日、登校してきた俺を、教室で待ち構えていたのは例外なく憂だった。

「《写り込む女》の調査はしてきたのかしら?」

昨日の今日でしかも朝っぱらからいきなりかよ、と心の中で毒づきながら俺は自分の机にかばんを置く。

「そこそこ、な。詳細は放課後に報告するよ」

たいして調べてなどいないのだがわざともったいぶってそう言うと、憂も少し得意気な顔をした。

「わたしも凄いモノを仕入れたの。きっとびっくりするわ」

楽しみにしてて、と思わせ振りに言い残し、颯爽と立ち去っていった。



『凄いモノ』?


何だ、一体。



憂がそんなことを言って本当に驚かされたことなんか数少ないのに。

彼女の思わせ振りな態度は全く当てにならないとうんざりするほどわかっているのに、


嫌な予感がするのはなぜだろう。


不安に思いながらも俺は席に着き、かばんの中からテキストを取り出した。

やがて担任が教室にやって来ていつも通りのホームルームが行われそのうち何の変哲もない授業が始まった。淡々と時間が流れるうちに、さっき抱いた嫌な予感のことはいつの間にか忘れてしまっていた。


そして、一日全ての課業が終了し―――。





放課後になるとすぐに俺は憂に連れられて部室へと移動した。

俺達は向かい合うようにしてパイプ椅子に腰かけた。俺はすかさずかばんから英単語帳を取り出してそれを眺め始める。テストまで猶予がないので一分一秒が惜しい。

そんな俺を気にすることなく憂は声をかけてくる。

「さっそくだけれど、調査結果を報告してもらえる?」

俺は単語帳をめくりながら、顔もあげずに口を開いた。

「《写り込む女》について怪奇現象に詳しい人物へ独自に聞き込みをしたところ、その噂はあくまでも都市伝説でありニュースソースに確信が持てないことから信憑性は極めて薄い。
考えられる可能性としては、どこかの出たがりの赤い服を着たオバチャンが、意識的にテレビカメラの類いに写り込んでいたのを、誰かが誇張して語ったためにそういう話が出来上がってしまった。
つまり要約してわかりやすく言うと、噂はデマだそーです」

以上、とさっさと話を切り上げる。父親から聞いた話にところどころ肉付けをした上で。
つーかそんなことより英単語をひとつでも覚えなければ。単語帳をペラペラめくっていく。



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